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マーライオン、シンガポールの“顔”として再デビュー 

 

日本経済新聞社 シンガポール支局  谷 繭子  

  ライオンの頭と魚の体を持つマーライオンは、シンガポールの観マーライオン光のシンボルだ。この石像、ガイドブックの表紙に必ず登場する割に、実物は案外小さく、期待に胸を膨らませた観光客を落胆させがち。それでコペンハーゲンの人魚姫像、ブリュッセルの小便小僧像と並んで「世界三大ガッカリ」などと不名誉な名で呼ばれることもある。

かつては海に向かって威勢よく水を吐いていたが、埋め立てが進んで橋の影に隠れてしまい、いつの間にか水を吐くのもやめた。テーマパークのあるセントーサ島に巨大な新マーライオンができてからは、オリジナルを素通りする観光客も増えたらしい。白い体にはシミのようなものも目立ち、さびれた存在になりつつあった。

 ところでマーライオンとはそもそも何者なのか?その由来を知る人は地元にも少ない。実は、1960年代、ある外国人デザイナーが考案したシンガポール政府観光局のトレードマークが始まり。ライオンの頭は11世紀、近隣国の王子がシンガポールでライオンを見つけたという伝説に基づき、魚の体は海上貿易の港として栄えた同国の特徴を表すので、「海のライオン」を意味するマーライオンと名付けた。後に石像に仕立て、観光資源に乏しいシンガポールの必見スポットに祭り上げた。こんな人工的で歴史的背景に欠ける生い立ちを知ると、また少しガッカリしてしまう。

注目のウォーターフロント開発地に引っ越し、真向かいはドリアン劇場

 そのマーライオンに、転機が訪れようとしていザ・エスプラナードる。

 最近シンガポールを訪れた人は、金融センターの高層ビル群近くで巨大なドリアンに似た建築物を目にしたはず。これは劇場とコンサートホール。芸術振興を目指すウォーターフロントの大開発計画、「ザ・エスプラナード」の中心的存在だ。ショッピングアーケードやレストラン街と合わせ、10月の完成時にはシドニーのオペラハウスに匹敵するシンガポールの“顔”になる。

 マーライオンがこのエスプラナードの真向いに引っ越し、再デビューするのだ。移動工事は4月中旬には終了し、お披露目も済んでいるはず。新たな住み家はマリーナ湾を見下ろす埋め立て地の突端。お化粧直しで色白に戻ったマーライオンが、今度こそ海に向かって水を吐く姿を見ることができる。周りの広場は月明かりの下、潮風に吹かれながらコンサートやショーを楽しめる野外ホールとなる計画。すぐ隣はカフェやバーがならぶトレンディな一角で、夜遅くまでにぎわっている。

これからは地元の人や観光客が集う注目のスポットとなり、周囲の施設と総合すればもはや「ガッカリ」リストからははずれることになるかも。30歳にして突如、格上げされるマーライオンはずいぶんな幸運者だ。

(写真は、上=さびれた存在になりつつあったシンガポールのシンボル、移転前のマーライオン。 下=劇場とコンサートホールを擁するシンガポールの新名所、ザ・エスプラナード。)


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