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シンガポールのバス“世界初”のデジタルテレビ登場 

 

日本経済新聞社 シンガポール支局  谷 繭子  

  シンガポールのバスにデジタルテレビが登場した。その名は「TVモバイル」。日本では昨年12月からBSデジタル放送が始まったが、移動するバスがデジタル信号を受信するというシンガポールの試みは世界でも初めてとか。放送内容はニュース、コメディ、アニメから「バスでできる体操」などさまざま。“世界一”が大好きなシンガポールだけあって、テレビバス1500台の運行記念式典では、リー・ヨクスァン情報芸術相が誇らしげな笑みを満面にたたえてバスに乗り込んでいた。

 しかしこの国でも、“世界一”ならばすべて歓迎されるわけではないらしい。このテレビバス、利用者の反応は賛否両論。新聞の投書欄ではむしろ反対派の声が賛成派を抑えた。「最新のデジタル放送技術で、バスの乗客サービスに付加価値をつける」と息巻いていたバス会社と放送局は、思惑がはずれて首をかしげる。

「静かなひとときを返して!」と反対派

シンガポールバス もちろん、「退屈な通勤時間が楽しくなった」という“暇つぶし歓迎派”はいる。これに対抗するのは、「バスの中の静かなひとときを奪われた」という“プライバシー擁護派”だ。バスの中で読書や睡眠、瞑想(?)を楽しんでいた人々が、「自分の見たい物を見て、聞きたい物を聞くプライバシー」をテレビに奪われた、という。

 そこまで大げさなことかどうかは別にして、実際テレビバスに乗ってみればアンチ派の不満にもうなずける。最大の問題は、大音量、そしてそれに輪をかける耳をつんざくような雑音だ。「夕べは遅かったからバスで絶対に寝る!」と朝の通勤バスで座席を死守しても、デジタル・ノイズが頭がい骨に響いて睡眠どころではない。反対派の意見に対応し、TVモバイルを放送するメディアコープ社は雑音の解消に向けて技術改善に取り組んでいる。

街に押し寄せる音の洪水 

シンガポールバス内のデジタルテレビ
  音、といえば、シンガポールの街はここ数年でかなりにぎやかになった――うるさくなった、という方が適当かもしれない。街に増殖した巨大スクリーンでは広告やポップ音楽のビデオがひっきりなしに流れる。大道芸人も許可制ではあるが認められ、あちこちで楽器を奏でる。ショッピングセンターの中ではプロモーションや子供向けアトラクション。洪水のように押し寄せるこれらの音、とにかくどれもが大音量なのだ。せめてバスの中くらい静寂を求めるのも当然といえる。

 せっかく「世界初」のTVモバイル。技術面だけでなく音量や番組の選択といった基本的な改善で、乗客に快適さを提供できるという気がするのだが。

(写真は、シンガポールバスと車内のデジタルテレビ=2001年3月著)


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01. 楽しい国にしよう!――シンガポールの新しい顔

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