嶋津良智氏が「できるリーダーになるための上司の条件」をテーマに講演 


 日経アジア社は5月27日、シンガポールのサンテック・シティでリーダーズアカデミーCEOの嶋津良智(しまず・よしのり)氏を講師に招き、「できるリーダーになるための上司の条件(副題:上司学のススメ)」をテーマに、新・日経テレコン21記念セミナーを開いた。ニュースおよび記事・企業情報検索サービスをオンラインで提供する日経テレコン21が機能や操作性を一新したのを機にサービスについて理解を深めてもらうために開催した。新・日経テレコンの紹介のあと、記念講演した嶋津氏は、ベンチャー企業の経営者として成功した経験から「上司には、社会を良くする力、人を良くする力、会社を良くする力がある」として、良い上司になることの重要性とそのための方法につき、あらまし以下のように語った。


できるリーダーになるための上司の条件

自分自身を磨き、部下との関係を磨く

  • 私は、企業業績の発展(株主満足=IS)のためには、マネジメント(従業員満足=ES)とマーケティング(顧客満足=CS)の2つのMが必要だと考えている。しかし、この2つのMのうちでは、マネジメントの重要性が80%、マーケティングの重要性が20%くらいで、マネジメントの重要性の方が圧倒的に高いと考えている。このマネジメントの領域こそが、私の提唱する「上司学」の対象領域となる。


  • 「上司学」の目的は、上司が自分自身を磨き、部下との関係を磨くことを通して組織を磨くことにより、肯定的で積極的な変化や変革をもたらす文化を構築し、企業を稼ぐ組織に変容させることにある。

  • 良き上司になるためには、Out put(結果)を前提として、In put (指示の出し方)を変えてほしい。例えば、ある仕事を頼む時に、「すぐにやってくれ」と言うよりは、時間に余裕を持って頼んだ方が良い結果が期待できる。同じコピーを頼むにしても、「これは役員会に提出する重要な資料なんだ」と、目的を明確に伝えると部下のやる気が出る。また、人事研修に送り出す時に、「そこで学んだ内容を次回の部下の人事評価に生かすように」と言って送り出すと受講する際の真剣さが違ってくる。

部下が成長を実感できる職場をつくる

  • 海外の日系企業の方々に話を聞くと、現地スタッフの退職が多いこと、また現地スタッフとのコミュニケーションがうまく行かないことで悩んでいる方が多い。それらの原因を考えると、1. 現地化が進んでいない(現地人材の登用、権限委譲の遅れなど)、2. 他の外資系に比べて給与水準が低い、3. 管理職を経験していない人が管理職として赴任してくる、4. 日本からの赴任者が必ずしも優秀とはいえなくなってきている、5. 日本人管理職は帰国すること、現地スタッフは辞めることが前提となっていて、教育への意識が薄い、6. 現地スタッフを信用しきれていない、7. 異文化コミュニケーションの受容性の低さ――などがあるようだ。

  • 東南アジアのある人材派遣会社の調べによると、現地スタッフが退職した本当の理由は:1. 今の会社にはもう学ぶものがなくなった、2. 今の会社に大きな不満があるわけではないが、つまらない、3. 今の会社は誰も何も教えてくれず、ほったらかしだった――などだという。ここでの本質的な問題がどこにあるかというと、私は部下を預かる「上司」に問題があると感じている。こういった問題は、シンガポール特有のものではなくて、どこの国にもある問題である。逆に言えば、「上司やまわりの社員がいろいろ教えてくれて、いろいろ学ぶことができ、権限が委譲されてわくわくし、自分が成長していることを実感できる」ような会社であれば、人は辞めない。

  • 私は部下を預かる上司には、「人を良くする力、会社を良くする力、社会を良くする力がある」と考えている。企業の戦略を考えるのもすべて人であり、部下の育成は上司にとって最大の社会貢献であるからだ。

  • また、いかに素晴らしい上司と出会い、「いい言葉」と「いい学び」と「いい思い込み」を与えられたかで、部下の人生の質が変わってくる。職場でどんな「言葉」や「学び」や「思い込み」を与えられたかが、実は私生活にも影響を及ぼす。ビジネスパーソンも家に帰れば一人の大人であり、子を持つ親である。上司は、人と企業に上質な文化形成をすることにより成長に寄与し、豊かな社会と明るい未来創りに貢献することができる。

求められるのは、まず「人望」

  • 「理想の上司像」について、上司と部下に別々にアンケートを行なったところ、部下が第1位に上げたのは「人間的魅力のある上司」であった。一方、上司にとっては「人間的魅力のある上司」は第7位に過ぎなかった。上司となる人々は、最も上司に求められているものは「人望」なのだということを知る必要がある。

  • 良いリーダーになるための魔法はない。ただ、ダメなリーダーほど、自社の売上げのあがらない原因や部下の育たない原因を、まだ自分が知らない特殊なスキルやテクニックのせいにして、それさえ知れば問題は解決すると考えているということが言える。自分の人間としてのあり方に問題があると考えずに、スキルやテクニックのせいにしていると、いつまでたっても問題は解決しない。

  • リーダーシップの基本は、「誰にでもできる簡単なことを、誰にもできないほど続けること」、そして「当たり前のことを特別に熱心に、しかも徹底的にやる」ことである。そして、ここで言う当たり前のこととは、1. 思考(考えさせる)、2. 体験、3. 行動、4. 徹底(反復)、5. 傾聴(話を聞く)、6. フォロー ―― である。

  • 子供への最高の報酬は、おもちゃなどを買ってあげることではなくて、「愛」というコミュニケーションを与えることである。それと同様、企業でも、おカネや地位というハードな武器を、コミュニケーションというソフトを利用してどう使うかが大切である。これが、うまくできた企業、そして上司はこれから生き残ることができる。


嶋津良智(しまず・よしのり)氏
リーダーズアカデミーCEO。大学卒業後、IT系ベンチャー企業に入社、トップセールスマンとして活躍。28歳で独立・起業。その後、2人の経営者と情報通信機器販売会社を設立、6年目に株式上場(IPO)を果たす。2005年、次世代リーダーを育成することを目的にリーダーズアカデミーを設立。2007年9月からシンガポールを拠点に活躍中。著書=「だから、部下がついてこない!」(日本実業出版社、2006年)、「上司のルール」(明日香出版社、2006年)など多数。